Quadrophenia 追っかけ旅行記(その2)

London is calling me

Hyde Park での Quadrophenia での成功は、誰もが(Peteですら)一回ではもったいないと考えたのは当然で、直後の N.Y. M.S.G. でのプレミアムショーを皮切りに、全米ツアーへと拡大していった。僕も野外ではなく、ホールで見てみたいと思っていた。そしてロンドン Earl's Court を含む、イギリスでの凱旋ツアー。引き寄せられるように再びロンドンへ向かうのであった。

出発

今回は3人連れ。終日フリーの4泊ツアーで、航空券・ホテル(朝食付き)で何と 12.8 万円。前回の半分で済んでしまった。世の中不条理なことが多い。

到着

ギター(ZO-3)抱えての入国だったので、問題ありきと思ったが、特に何事も無く入国。何とホテルまでのバス送迎あり。しかし、他のホテルに寄ったりしてかえって時間がかかる。これなら地下鉄の方が早い。こんなの無しにして安くして欲しい。今回のホテルは、Regent's Park のそば。中心街まではちと遠い。

Tommy

ホテルへの到着を急いだのは、Tommy を見るためだ。日曜は休みなのでこの日しか無かった。ほとんど時間がなかったので、劇場で直接チケットを買う(普通は安売りチケットを買うべき)。それでもチケット嬢は良い席を取ってくれた。感謝。

ミュージカルなるものを観たのは初めてであったが、演奏も生でやるのを知る。予想に反して、オリジナルに近いアレンジで演奏している。Overture はなかなか良かった。アコースティックギターが完コピーでとてもうまい。その他の人は普通。ストーリーは少し変更していて、話の流れがよりスムーズになった気がする。ただ結末はあんまり好きじゃない。分銅と加藤は途中で記憶を失う。

ポスター

ロンドンへの到着からやたらと目に付いたのが、コンサートの告知ポスター。ロンドン中(特に繁華街)に張られている。"The Who" の文字が心を躍らせる(分銅君はこれを見て逝ってしまった)。めちゃくちゃ欲しいが、べったりと壁に張られているので、失敬するのは無理だ。

ところが、2日目のコンサート終了後、駅前で£2で売っているのを発見。明らかに出所が怪しいが、迷わず買う。宝物として大事に抱えて帰国。おそらく日本に3枚しかないポスターだ。

Live

今回は初日のチケットを日本で手配済みであった。定価は£27.50だが、手数料込みで、1万ちょっとかかった。前回の経験からチケットの入手には不安がなかったのだが、一応保険ということで。

会場の "THE WHO QUADROPHENIA"の文字を見た加藤君は情緒不安定となる。コンサートが終わってもしばらくボケを続けていた(おまけ参照)。僕は駅前のだふ屋と翌日のチケット交渉。良い席だと言って£100の言い値をつけた。「今はそんな金は無いよ」と言ったら、「じゃあ、明日の朝ホテルに届ける」と抜かしやがった。相当ぼっているらしい。適当にあしらおうとしたら、「ここに電話しろよ」とメモを渡してきた。"Big Ian"と名乗った。

席は2階(1階って言うのかな?)の前の方。左端。なかなかの席だ。アリーナの後方よりははるかに良いと思う。今日は双眼鏡で観覧。日本人の姿はほとんど見あたらない。前座はトリオバンド。これと言って特徴のない音。

ライブは、正直言って、これほど圧倒されるとは思わなかった。ツアーを経験したバンドはタイトで、アルバム以上の音の壁。50過ぎには見えない Roger の格好良さ。John の超人的なベース。そして Pete の信じられないカッティング。Allman Bros. の初来日ライブを抜いて、個人的ベストライブの1位を獲得するのであった。

初日のコンサートで、良い席には全く興味のなくなった三人は、ロンドン繁華街のチケット屋をまわる。「もうどこでも良い、見られれば」という感じで、£45のチケットを発見。深く考えずに買うが、チケット見て手が震える。何と2列目だ。会場に着いて、さらにびっくり。正真正銘ど真ん中。正面が Roger である。席に着くなり、前の席(つまり最も良い席)の男が、「いつどこでチケット買った?」と聞いてきた。「今日、ロンドンで」と答えると、「実はそれは盗品(Stolen Ticket)なんだよ」と教えてくれた。何とも居心地の悪いこと。でもそれはコンサートが始まるまでのことであったが。

今考えても夢のようにしか思えない。恐らくもう一生味わえない。乗りまくりの The Who はアンコールの持ち曲全部を披露した。"Won't get fooled again", "Behind blue eyes", "Substitute", "Naked Eye", "Who are you"。アンコールになると最前列にはいろんな奴が紛れ込んできて、「何でもあり」状態になる。バックステージパスをぶら下げた奴が僕らの前に陣取って騒いでいたが、僕らがコーラスでハモっているのを聞いて「何じゃこいつら」という顔をした。いや別にハモるつもりじゃないけど、自然にそうなってしまうのだよ。

コンサートの後が最高であった。コンサート会場と地下鉄の駅とは道路を挟んでいる。車を通すため警官隊が帰りの観客をふさぐ。ところがハイテンションの観客たちは、

"We're MODS, We're MODS..."
と合唱しながら、警官隊の包囲を突破してしまった。映画 "Quadrophenia(さらば青春の光)" を知っている人なら笑ってくれるだろう。僕らは完全にタイムスリップ状態である。

ホテルに戻った三人は放心状態で、TV も CD も点けず、無口であった。

Rock Circus

The Who のメーリングリストからの情報で、ピカデリーサーカスの "Rock Circus" という蝋人形館に Pete と Roger の蝋人形があることを知り、向かう(マダムタッソーの別館らしい)。何やら全然似てないとの話であったが、Roger の方は結構似ていると思う。Pete ははっきり言って似てない。

もちろん The Who 以外にもたくさんの Rock Musician の蝋人形やら手形やらがあって、楽しめる。時間つぶしにはもってこい。お勧め。

Brighton

いくら MODS の聖地だからといって、半年に2度も行くところではないが、ほかの二人が行ったことないから仕方がない。思ったよりは賑わっていた。夏よりも寒さを感じないのはなぜだ。今回は Palace Pier にも上陸。West Pier の方は第2次世界大戦以来(!!)の補修工事が始まったようだ。今回喰った Fish & Chips は前回よりはまともであった(とは言え後で胸が焼ける)。なにしろ日が落ちるのが早いので4時すぎには真っ暗である。とっとと帰る。

Battersea Power Station

すでに閉鎖された発電所。すでに周りは暗くなっていたが、却って異様なたたずまいを見せる。全員感動。一応言っておくがここは観光名所ではない。"Quadrophenia" がこのそばのスタジオで録音されたのである。またアルバムに同封された写真集の最初のページで Jimmy のバックに、ガスタンクと一緒に写っている。ロックファン一般には、Pink Floyed の "Animals" のジャケットで有名である(豚がとんでいる奴)。

周りはJimmyが住んでいそうな中流階級の住宅街。観光客はもちろん居なく、日本人も僕らぐらいだろうと思っていたら、前方から歩いてきたギターを抱えた若者に声を掛けられる。

まさかこんな所で日本人に話しかけられるとは思わなかった。兄ちゃんは日本人を見つけて、かなりホッとしていた様子であった。しかしギター一本抱えて、一人で、英語も不自由な様子で、パブを探しているとは、僕らよりよっぽど怪しい。

Big Ben

最終日の午前中、残された3時間にすべての観光をこなす。と言っても Big Ben とバッキンガム宮殿を見たくらいである。しかも衛兵交代式は休みであった。

Good Bye

ということで成田に帰国。あっと言う間であった。

Misc

Paul Smith は日本より高い。分銅君は何も買えなかった。代わりに John Smedley のポロシャツを買う。

おまけ

ロンドンで舞い上がる加藤

その1. 人の話聞けよ(Part1)

その2. どこに泊まるねん

"White City" 知らない人は、PartI を読んでね。

その3. 人の話聞けよ(Part2)

その4. 誰だよそれ

ロンドンで一人の世界に入る分銅

全般に分銅君は無口でした。
shikano@pml.co.jp